特別企画3 セゾングループについて
1971年の発足からバブル崩壊まで、日本最大の流通グループとして活躍した西武・セゾングループ(旧・西武流通グループ)。
西友や西武百貨店を語るためには切っても切れないこのセゾングループについて調べてみました。
※セゾン(SAISON)…フランス語で「季節」の意味
第一期 〜西武鉄道の流通業参入〜
セゾングループの元になったのは「西武鉄道」、そして「西武百貨店」です。
↑首都圏の人には黄色い電車でおなじみの西武鉄道。
まだ西武鉄道が「武蔵野鉄道」という名前だったころのお話。
場所は東京の池袋。ここに1933年、老舗デパートの「白木屋(後の東急百貨店)」と鉄道会社の「京浜電気鉄道(後の京急)」が共同で「菊屋デパート」をオープンさせました。
このデパートを1940年に武蔵野鉄道が買収したのが西武流通グループの始まり。
武蔵野デパートとなった菊屋は武蔵野鉄道の西武鉄道への改称を期に1949年、「西武百貨店」に名前を変更します。
こうして西武百貨店は誕生しました。
↑全ての始まり、池袋の西武百貨店は現在も旗艦店として活躍中。
第二期 〜「西友ストアー」の誕生〜
ここからはスーパーについて取り上げているサイトらしく西友についての話です。
西友の1号店は1956年、西武百貨店のスーパー部門「西武ストアー」として誕生しました。
その後1963年には「西友ストアー」に名前を変え、関東に多数の店舗を構える大手スーパーに成長します。
↑「西友ストアー」時代から営業を続ける西友所沢駅前店。
その後ただの「西友」に名前を変えるわけですがその前に大きな出来事が。
第三期 〜堤康次郎の死、西武グループの分裂〜
こうして事業を拡大していった西武鉄道の流通部門。しかし転機はやってきます。
創業者にして1代で基礎を作り上げていた堤康次郎が1964年、突然の死去。
それによって西武グループは三男であった堤義明に引き継がれました。
しばらく以前の状態を保っていたとされる堤義明でしたが流通部門を次男の清二に譲渡。
「西武鉄道グループ」と「西武流通グループ」の分裂の始まりです。
その後1971年、義明と「相互不干渉」の確約を交わし、本格的に独立の道を歩み始めました。
第四期 〜文化戦略〜
分裂直前の1969年、池袋にあった百貨店「東京丸物」を「池袋パルコ」に業態転換。
この「パルコ」を清二が信頼を置いていた増田通二にという人物に経営を任せ、新たな業態の商業ビルを模索します。
奔放な性格だったという通二によって独自の大胆な戦略が打ち出されたパルコ。
西武流通グループ分裂後の1973年には渋谷にも新店舗をオープン、芸術や若者の文化との協調を掲げたパルコは大成功を収めます。
こうして西武流通グループの「文化戦略」がスタートしました。
↑池袋パルコ。隣接する西武百貨店とともにセゾングループを牽引していきます。
第五期 〜西武流通グループの躍進〜
パルコの成功により方向性の定まった西武流通グループ。
あとは躍進を続けるのみです。池袋西武には別館を増築してセゾン美術館を設立。
「リブロ」などの書籍店、さらには「パルコ出版」や「リブロポート」などの出版業も行います。
他にも音楽、映画などあらゆる文化的なものとの融合を図っていきます。
1985年に「西武流通グループ」は「セゾングループ」に名前を改称。
また、スーパーの西友を百貨店と同じ「西武」の名前で営業するなど(後のLIVIN)さまざまな経営戦略を打ち出していきました。
第六期 〜セゾングループ全盛期〜
・「無印良品」…今では1つのブランドとして成長していますがこれの発祥もセゾン、そして西友でした。
元々西友のプライベートブランドとして誕生。今で言う「トップバリュ」とかと同じ存在だったわけです。
しかしここは文化戦略のセゾングループ。ただ安い物を売るだけではなくデザイナーの田中一光と協力して誕生しました。
・「ファミリーマート」…誰もが知っている大手コンビニエンスストア。実はこれもセゾンが作りました。
西友の小型店として73年に1号店がオープン。81年に西友から独立して店舗展開を始めます。
・「セゾンカード」…「緑屋」という月賦百貨店(分割払いで買い物が出来る百貨店、代表的なのは丸井)と西武が提携したものです。
緑屋が持っていた分割払いのノウハウを生かし大手クレジットカード会社に成長。
…と挙げていったらきりの無いほどたくさんの物がセゾングループによって生み出されました。
第七期 〜バブル崩壊とグループの解体〜
しかし何事にも終わりはやってきます。
一瞬の夢だったバブルが崩壊した1990年代、デパートよりも安値で商品を販売するディスカウントストアなどがもてはやされた時代。
不況によりセゾンが行っていた「文化戦略」であった芸術や音楽、映画などは衰退していってしまいました。
さらにワンマン経営の問題点、多額の不動産投資による負債…次々に現れた問題点。
こうしてセゾングループは解体へと向かいました。現在、西武百貨店は7&iホールディングスと経営統合。
西友はアメリカの大手スーパー、ウォルマートとの合同会社に。ファミリーマートや無印良品は独立とそれぞれの道を歩んでいます。
80年代に栄華を誇ったセゾングループはこうして静かに消えていきました。
現在も各地に残る旧セゾン系の施設からは今でも全盛期の雰囲気を感じる事があります。
↑脱スーパーを目指した「新生活百貨店」ことLIVIN。
↑「Walmart」のロゴが掲げられた西友赤羽店。
セゾングループはかつてのグループ各社たちの中で今も生きています。
・おまけ 全盛期のセゾングループ各社一覧
2012/7/1作成開始