バブルラジカセ
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バブルラジカセとはラジオカセットレコーダーのうち、1980年代後半頃から1990年代前半頃に製造されたいわゆるCDラジカセ全盛期の高級ラジカセの俗称である。省略して「バブカセ」と呼ばれることもある。
- なお名称・カテゴリーとしては発売当初によるものではなく、後年になって愛好者筋によってこう呼ばれているに過ぎない(後述)。
目次
1 概要 2 名称について 2.1 派手な製品 2.2 日本国外 3 歴史 3.1 時代背景 4 該当される機種 4.1 パナソニック 4.2 ソニー 4.3 日本ビクター 4.4 シャープ 4.5 三洋電機 4.6 アイワ 4.7 東芝 4.8 その他 5 人気の理由 6 関連項目 7 外部リンク |
[編集] 概要
これら2000年代にバブルラジカセと愛好者層に呼ばれるようになった製品群は、発売当時は中学生・高校生から青年者層でもオーディオに関心を持つ者(そのハイエンド層がいわゆるオーディオマニア)にアピールするために市場投入された高級機種である。1970年代頃までの社会人を中心とした高級ステレオセットとは違い、余り経済的に余裕のない青少年層らが「アルバイトの賃金やお小遣いを貯めて買える」という感覚のものであった。また価格的にも当時の数万円台で、最高級機種でも概ね20万円以内であった。
これらは赤外線リモコンでの操作が可能なモータ駆動式の電動ボリュームやシンセサイザーチューナーは当然のこと、メタルテープ録音対応・AMステレオ対応・ドルビーNRB-Cタイプ、グラフィックイコライザ(スペクトラムアナライザを兼ねたものが多い)同軸S/PDIFデジタル出力(MD登場以降は光デジタル出力が一般的になる)搭載機種などもあり、各社がそれぞれ組み合わせて特色を出していた。また多機能化の一端としてCD-GカラオケデコーダーやビデオCD対応機種も見られる。
しかしこれら製品の登場時期は、ゼネラルオーディオ市場を含む家電製品全体が低価格化していく時期でもあり、一体式のミニミニコンポが高級CDラジカセよりも安く販売されるに至って、ラジカセは本来のポータブル路線に回帰する。結果として価格帯別に見るとCDラジカセのすぐ後ろにミニコンポやミニミニコンポが控えるようになってしまい、「超高級CDラジカセ」という商品ジャンルは、市場戦略的にもあまり意味を持たないものとなって、衰退していった。
2000年代に入ってもゼネラルオーディオ市場におけるハイエンド層におけるミニコンポへの置き換えは進行中で、さらにはデジタルオーディオプレーヤーの普及によりパーソナルコンピュータがオーディオ市場に食い込んできた関係で、メーカーも最盛期ほど市場に新しい商品を投入しておらず、また当時の製品を簡略化したような製品しか製造していない。ただ現在も熱狂的なファンは多く、中古市場などでも最盛期の商品に対する人気がみられ、中高生といった若者にも浸透してきている。その世代のブログやウェブサイトが散見される部分にも、関心を持つ者がいることが伺える。
[編集] 名称について
この名称は日本経済に1980年代中期より発生して社会状況を一気に変化させたバブル景気に拠っている。
ただし「バブル」(泡)という言葉は、1980年代末頃には経済分野で投機に次ぐ投機が実質経済を上回るバブル経済化しているという懸念から「バブル様経済(ばぶるようけいざい・ないし景気)」という表現に現れたものの、一般のメディアでは1990年代初頭まで「バブル経済」自体が認識されていなかった。
この「バブルラジカセ」という言葉も、やや時代が下った後で「バブル景気」の言葉が時代を振り返る用語として定着した結果として、「バブル時代の落し児」的に名づけられた名称である。主に愛好者筋の俗語に拠るため言葉の出現時期は不明だが、遅くとも2000年代初頭には使用されはじめている様子が伺える。またその出自もあって、定義や該当する製品にもやや曖昧性を含む。このため用語にも当時の商品宣伝用の造語やバズワードが多く見られる。
[編集] 派手な製品
CDラジカセという製品群で見ると多機能かつ豪華な作りの目立つハイテク家電ではあるが、反面オーディオ機器として見た場合は、やはり設計に大量生産向けの廉価版としての妥協を含むなど、「より良い音」を求める向きにはいささか不満が残るものである。
店頭で競合製品と並べられ比較された場合に、他社製品を蹴落とす上で過剰なブースト(増幅機能)を組み込んだり、カタログスペック上の最大出力などが目立つよう、極端に派手な音作りをする傾向もある。しかしこういった「店頭でのアピール度」を重視した結果、周辺雑音の少ない自宅等で鳴らしてみると全体的なバランスが破綻していて非常に下品な音に聞こえる傾向がある模様である。
ラジオ受信機はシンセサイザーチューナー(電子制御式の受信機)だがチューニングメーターがなくアンテナの角度調整が難しい・外部アンテナ端子もないと中途半端な機能もみられないことではない。
またこういったラジオやコンパクトディスクを音源とした録音では、録音レベルや感度・バイアスの自動調整機能を使っても高級テープの特性に追随しきれず音がこもるなどの問題点も機種によっては存在する。
[編集]日本国外
欧米ではレジャーなどで「皆で楽しめる」音響機器を屋外に持ち出す傾向がある。ラジカセは乾電池でも駆動でき、また自動車のシガーソケットからも電源が取れるため、格好の屋外持ち出し音響装置に成っている模様だ。その点で、現在でも高級機種に需要があると考えられる。
ただしハイエンドラジカセという区分けはみられるものの、果たしてバブルラジカセ同様の製品群認識があるかは不明である。
[編集] 歴史
1980年代後半にCDの生産枚数がアナログレコードを上回り、当時本体横幅が36cm前後のミニコンポはアナログプレーヤーがオプション扱いとなり、そのサイズを疑問視されるようになった。
横幅24cm前後(ダブルカセットデッキのサイズに起因する)のいわゆる「ミニミニコンポ」登場と前後して、CDプレーヤー内蔵ラジオカセットレコーダー(以下「CDラジカセ」)は、特に手持ちのアナログレコードが少ない(または全く持たない)当時の若者や中高生を中心に人気を博していった。最盛期にはCDラジカセだけでも製品ランクが異なる5〜6系統を抱えるメーカーも存在し、最上級機にはミニコンポの上位機種と同等、またはそのサブセット版といった趣の、多機能を詰め込んだ大型機をラインナップしていた。
この当時、いわゆるゼネラルオーディオと呼ばれる一通りの機能が揃ったオールインワン型の簡便な音響機器の製品群には、当時登場したばかりで明確な地位を持っていなかったミニコンポと、従来からあるラジカセにCDプレーヤーを追加したCDラジカセがあったが、これらバブルラジカセは両市場の中間を埋め、より高価なミニコンポ市場へと誘導する狙いもあったと思われる。
初期のCDラジカセは、当時の主流だった三洋「U4」や東芝「SUGAR」・松下「ラブコール」シリーズなどに代表されるコンパクトで廉価版路線の小型ダブルカセット機をベースに、一方のカセット部をCDプレーヤーに改造したような、CDを垂直にセットする形態のものが多かった。しかし本体の奥行きが狭いことから平置きした際の安定性は芳しくなく、再生中の転倒によるディスクの損傷や音飛び等の問題、また当時は依然としてダブルカセットのニーズが高かった事等もあって、後にダブルデッキとは別にCDを天面や内部に水平ローディングさせる形態が主流となる。
この奥行き増加により本体の容積に余裕がでたことでバススピーカーを組み込む余地が生まれ、低音の再生能力が向上、またアナログレコードの針音などでスピーカーを損傷する可能性も減少したため、低域を極端なブースト回路やイコライザー等を搭載して低域再生に重点を置いたいわゆる「重低音」サウンドをアピールポイントの一つとした。低域再生の切り札としてサブウーファ(当時は専ら「スーパーウーハー」と呼ばれていた)を内蔵するのも流行した。これは当時のミニコンポの最上級機がドルビー・プロロジックII(2ch音声を5.1chサラウンドに変換できた)対応のAVサラウンドアンプを搭載しており、サラウンドスピーカーに加え専用のサブウーファがオプション設定されていたためでもある。
[編集] 時代背景
当時は、バブル景気による良好な経済状態で、何処の家庭でも比較的潤っていたため、とにかく「むやみやたらと贅沢な機能」や「取りあえず高級感」のある様々な製品が各々の市場をにぎわせていた。その中では娯楽家電も例外ではなく、家電メーカーでは高級機種をこぞって市場投入していた。
またこの時期は、CDが発売され、従来アナログテープ(コンパクトカセット)やアナログレコードメディアからの置き換えが進んだ。読取装置の性能が再生品質に顕著な影響を及ぼすアナログメディアとは異なり、デジタルメディア化したことで読取・再生装置の品質がそれほど音質に影響しないようになり、一気に音響機器の再生品質向上が進んだ時代でもある。この時期を境にレコードは衰退し、より扱いやすいCDメディアによる音楽媒体の販売・流通体制へと切り替わった。
ただし音響機器の音質は、このCD普及以降も出力側のスピーカーの品質には相変わらず影響されるため、その点では「読み取り再生部分の性能に見合った出力機能の向上も求められた」ともいえよう。これらにより、好景気にも絡んで急速に家庭内の音響機器の置き換えが進められていた。
[編集] 該当される機種
[編集] パナソニック
- CDシリーズ
- FDシリーズ
- DTシリーズ (但し35,36,37は含まない)
- DSシリーズ
- STシリーズ
※コブラトップ(操作部の蓋が開く様を、コブラが鎌首をもたげるようになぞらえた呼称。最初期は手動による開閉機構だったが、のちに開閉機構が電動化され、最終的にはラジカセ本体に向かって手をかざしただけで自動的に開閉するマジカルコブラトップに進化)やカセットデッキのリッド部分が電動で開閉しカセットテープをイジェクトキーを押して電動でローディングするサイバートップ、重低音回路のS-XBSといった先進機能を搭載するなど、バブルラジカセで最も人気が高いメーカーである。ウーファやスピーカーの各バイワイヤリング接続によるマルチアンプ構成、同社自慢の1ビットDAC「MASH」(ただし最初期は4倍〜8倍オーバーサンプリングデジタルフィルター付16ビット〜18ビットの抵抗ラダー型マルチビットDAC)などを高級機種などに搭載し、音質にも本格的なこだわりを見せた。
また、デジタルコンパクトカセット(DCC)に対応する機種も存在した(商品名は「DCCステーション」)。
[編集] ソニー
- DoDeCaHORN CD (ドデカホーンCD)
- SONAHAWK (ソナホーク)
- PRESH (プレッシュ)
- Dr.CHANGER(ドクターチェンジャー)
※スイーベルスタンド(上下左右に動くスタンド。ラジカセを載せて使用する)や電動操作パネルなどを採用して高級感を演出。3CDチェンジャーなど先進的な機能も多い。同社が世に送り出したバブルラジカセとしては当時、パナソニックと人気を二分分けしていた。
[編集] 日本ビクター
- CDean (シーディーン)
- CDian (シーディアン)
- CDioss (シーディオス)
- DRUM CAN (ドラムカン)
※音質へのこだわりが非常に強く音響メーカーのものであるため、音質の評価が非常に高い。同社のミニコンポ「ロボットコンポ」シリーズで採用された補助スピーカー「パノラマ電動スピーカー」を装備したものもあった。
[編集] シャープ
- SEGNO (セグノ)
- QTから始まる型番
- CDから始まる型番 (コンポタイプが多い)
- DIGITURBO (デジターボ)
※SEGNOの一部機種にはほとんどの操作が可能なタッチパネルなど、今のラジカセでは考えられないような同社独特の機能を搭載しており、現在でも人気がある。また、ツインカムダブルカセット(二つのカセットテープを重ねるような形でセットする)を搭載するなど個性的な機種も多い。 また、ヤマハの低音再生技術であるAST(アクティブ・サーボ・テクノロジー:ヘルムホルツレゾネータ)を搭載したモデルもある。
[編集] 三洋電機
- PH-WCDから始まる型番
- (Σ)ZooSCENE (ズシーン)
- Primaire (プリミエール)
※スピーカー分離型のラジカセから丸いフォルムの小さなラジカセまで個性的な機種を多く出していた。重低音再生を重視するモデルが多い。また、同社の代表的なラジカセであるU4でみられたサラウンド機能を搭載しているものもあった。ズシーンのCMにはロックバンドのボン・ジョヴィが起用されていた。
[編集] アイワ
- STRASSER (シュトラッサー)
※現在ではソニー傘下で海外生産拠点の製品による安物のイメージが連想されるが、当時は音響機器メーカーとして自社設計でかなり高品質な製品を製造しており、高級ラジカセも出していた。
[編集] 東芝
- SUGAR CD (シュガーシーディー)
- CD WORKS (シーディーワークス)
※CD WORKSはAurexブランドでの販売。自社設計の重低音回路である「XLS」を搭載するなどして、かなりの高音質化がなされていた。 また、一部機種ではカセットデッキは両デッキとも録音・再生ができた。
CMには鈴木亜久里が起用された。
他にも同社から発売されたCDラジカセは存在するが、ほとんどがOEMである。
[編集] その他
日立がLo-D(ローディー)のブランドで発売していたがOEMが多い。
[編集] 人気の理由
前述の通りバブルラジカセは大型機種がメインであり、音質や機能性を重視するなど、現在のコストダウン競争の中、現行機種より質感もかなりよいため、現在でも人気がある。特に分解したりするなど改造して楽しむ人が多い。
現在はオークションやリサイクルショップなどで1000円〜1万円ほどと安価で売られることが多いが、数の少ない貴重なラジカセは数万円するものもある。
[編集] 関連項目
[編集] 関連リンク
- バブルラジカセ博物館(ファンサイト)